2008年8月23日 (土)

演劇「女教師(じょきょうし)は二度抱かれた」

松尾スズキ作・演出の本作をシアターコクーンに見に行った。 Nは阿部サダヲのハジけた演技が見たいし、市川染五郎、大竹しのぶにも興味あり、とのこと。確かに阿部サダヲはハジけていたし、大竹しのぶは予定通りの名演技だったが、市川染五郎は、この芝居に出て本当に得したのだろうか?イジられキャラで終わってないか?ちょっと可哀想な観すらあり。そんな中で、複数の端役をこなしつつ、いちばんおいしいところを持っていったのは、やはり松尾スズキだったような気がする。当然か。Nは見たいと言いつつ、やっぱり演劇って性に合わないなあ、なんだか狭くて、暗くて、必死で・・・それでいてハジけていたのか?というと意外と地味だったね、という感想で2.5点。Tは劇中で阿部サダヲと市川染五郎による発泡酒CM撮りのシーン(衣装とかメイクとか)が、満点大爆笑だったので3.5点。合計6点。しかし、この演劇の下敷きになっている「欲望という名の電車」という作品の背景や、そのヒロイン(ブランチ)役をかつて大竹しのぶが演じたことがある、ことなどをよく理解してから見た方がよいのか?そんなことは、どうでもいいのか?をつらつらと考えた結果、やっぱり、背景をよく知っておかないと、ストーリー展開(特に結末)の意味がつかみにくいと思った。やっぱり予備知識は重要。

Jokyoushi

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2008年8月11日 (月)

映画「The Dark Knight」

とても濃密な映画だった。というか、起承転結がしっかりしたお話を4話分ほどゴチャ混ぜにしたような感じで、バットマンが4回くらい危機に陥り、4回くらいジョーカーと戦い、4回くらい街がパニックになり、その辻褄を頭の中で合わせなければならない。バットマンもジム警部補もデント地方検事もゴッサムシティの平和を守る中、それぞれの立場で恋愛、家族愛の軋轢に苦しみもがき、心は大きく揺れ動く。そんな中で一点の曇りも無く自らの信じるところを徹底的に生き抜く狂気の男、ジョーカー。街を支配し全ての富を手に入れた途端、それを全て燃やしてしまう。彼は、支配することすら興味が無く、どこまでもカオス(混沌)を希求する。逆に支配を目論む者は、マフィアだろうが、白騎士だろうが黒騎士だろうが、正義だろうが悪だろうが、場合によっては自分自身ですら、容赦なく破壊する。この破壊の美学の前では、バットマンの正義の哲学すら陳腐に見えて霞んでしまう。このゾクゾクするような確信犯的映画にNは3.5点、Tは4点。合計7.5点。


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2008年8月 9日 (土)

映画「崖の上のポニョ」

六本木ヒルズにて。購入したパンフの冒頭に「監督企画意図」と題するマニフェストがある。「〜略〜アンデルセンの『人魚姫』を今日の日本に舞台を移し、キリスト教色を払拭して、幼い子供達の愛と冒険を描く。〜略〜少ない登場人物。いきもののような海。〜略〜海を背景ではなく主要な登場人物としてアニメートする。〜略〜」などとある。かつて「アルプスの少女ハイジ」において高畑勲監督がヨハンナ・スピリの原作から「慎重に宗教観を切り離した」ように、また、少ない登場人物へのこだわりや、海の表現を共にアニメートのテーマにしてきた小田部羊一氏、そのご夫人であり昨年5月に逝去されたアニメーター奥山玲子さんへの想いなど、様々なことどもが、今一度、昔の手技(てわざ)に回帰し、背景と作画を一体化させ、緊張感のある少ない線で、本当のアメニーションをつくりあげてやろうと宮崎駿に決心させたのだろうと想像する。その渾身の一作がポニョだ。近藤勝也(作画監督)の作詞、久石譲の作曲になる「崖の上のポニョ」という歌も、そのコンセプトと過不足なく一致している。この映画で重要なのはアニメーションそのものであり、あまりストーリー進行や各キャラの落としどころや顛末にこだわってはいけない。
Tが一番好きだったのはエンディング。丸くワイプアプトして、かわいいスタッフテロップが曲とともに流れ、順番とかはゴチャ混ぜで、「宮崎駿」の文字すらどこにあるのかわからずにスパっと終わる。なんという歯切れの良さ。Tは、3.5点。Nは、感情移入できるキャラクターがなく、物語の本質が深く心に響かないこと、アニメの技はすごいのだろうが画調に魅力を感じないこと、日経新聞の映画評で満点をとっているような映画は、個人的に認めていないという観点から2.5点。合計6点。
しかし、Tにとっては宮崎駿という人がちょっと好きになってしまいそうな映画だ(手の復権とノスタルジーの狭間で、手を動かすことを辞めない巨匠に好感を持たない人がいるだろうか?タバコを吸わなければ完璧だ)。文化庁に日本アニメ界の偉業とも位置づけられそうな本作が興収100億円を超えるのだとしたら、宮崎駿にしかできない、万々歳の満点であり、これでいいのだ!とバカボンパパのように言わざるを得ない傑作。

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2008年7月 7日 (月)

映画「SPEED RACER」

インディ・ジョーンズ、ミラクル7号と、このところ微妙な映画が続いている石原家は、今回の映画選択についても自信は無かった。駄目モト的な気分で六本木ヒルズへ。ヒルズではポニョ(崖の上のポニョ)の完成披露が行われており、知り合いに多く会ったが、ポニョを見に来ている訳ではない我々は逃げ込むように、こっそり6番スクリーンに。この映画のオリジナルは1967年に「マッハGoGoGo」というタイトルでフジテレビで放映されていたTVアニメ。TもNもリアルタイムで見ており歌も唄える。このあり得ない荒唐無稽な自動車レースアニメをウォシャウスキー兄弟が映画化したのが本作。TもNも拍手喝采級に盛り上がったが観客は10人しかいない。なぜだろう?この見たこともない、マトリックスをも超えた映像美、飽きないレース展開、ユーモラスで個性的なキャラクター達、極彩色のめくるめくような3D万華鏡的陶酔、に、なぜ皆は感動しないのか?やっと巡り会った素敵な映画にNは4点、Tも4点で合計8点(そうは言っても好き嫌いがある映画ではある)。Wikipediaによると、原作の吉田竜夫や総監督の笹川ひろしら主要スタッフは運転免許を所持しておらず、自動車やレースについての深い知識がなかった、という。なるほど、万人が喜ぶわかりやすいものづくりには、深い知識が邪魔になる場合があるのだ、ということを思い知らされる逸品である。我々の中で、ウォシャウスキー兄弟は、クエンティン・タランティーノを超えた。


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2008年6月28日 (土)

映画「ミラクル7号」

「少林サッカー」で一躍有名になったチャウ・シンチー監督の最新SF映画。期待に胸を膨らませて錦糸町の映画館に向かうTとN。錦糸町東宝シネマは「劇場版どうぶつの森」以来だ。原題名は「長江七號(Chang Jiang 7)」で、中国の有人宇宙飛行ミッション「神舟七號」にちなんでいる。それを「ミラクル7」という邦題にするのは間違っていると思うし、センスも悪い。主人公の少年は1万人のオーディションから選ばれた女の子が演じており、監督はその子を養女にしたという。キャラクター設定は「E.T.」と「ドラえもん」を合わせたような感じがあるが、映画そのものはチャウ・シンチー監督の極私的なこだわりや好みや性癖や趣味がたっぷりで、ちょっと恥ずかしくなるほどフォトジェニックなシーンに満ちている。でも映画を見終わった後で、この映画を見てよかったと思った。「インディ・ジョーンズ〜クリスタル・スカルの王国」は見ない方がよかったと思った(夢が壊れたから)。そういう点では、魅力的な映画なのだけど、人に薦められるか?というと、やはりこれは「お薦めできない」しろものである。映画パンフレットを買った時に店員さんに「ミラクル7号の関連グッズ売り場は?」と聞いたら「ありません」と言われてがっかりのN。何か買いたくなるほどナナちゃんは可愛らしかった。アメリカ製キャラは、グロテスクだったり濃すぎたりするものが多く、アジア製は可愛いものが多いと感じるのは我々がアジア人だからか?というわけでTとNはともに2.5点で、合計5点。


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2008年6月15日 (日)

映画「インディ・ジョーンズ〜クリスタル・スカルの王国」

久しぶりのインディ・ジョーンズだ。一体、どのくらい前に見たんだろうか?と調べてみると第一作目の「失われたアーク」が27年前。ショーン・コネリーとの競演で話題になった第3作目「最後の聖戦」でも19年前である。懐かしい、というか、古いというか。そして、その古さそのままにノスタルジックな演出が散りばめられている。映画好きは、シーンのひとつひとつに名作映画の断片が詰め込まれていることを喜ぶだろう。一方で、昔、インディ・ジョーンズを初めて見た時に感じた、あのワクワク感、映画の可能性を拡張してくれたことへの驚き、新鮮さ、と言ったものは見られない。むしろ「蛇足」。つまり、この映画を本当につくるべきだったのか?という根本的な疑問が沸き上がってくるほど。Nは、それでも映画の楽しさ、娯楽性はある、と3点。Tは2.5点。合計5.5点。


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2008年6月 1日 (日)

DVD映画「河童のクゥと夏休み」

前から見たかった映画(DVD)を新宿高島屋で買ってきた。映画を見終わってシーンとなるTとN。原恵一監督が作りたかった映画と、現在の私達が見たいものがうまく一致していないという雰囲気が漂った。河童を通して人間が破壊してきた自然を、あるいは人間が作り上げてきた都市(という人間の巣)の怖さを、あるいは人間が失ってしまった生き物との以心伝心を描く物語なのであれば、クゥの力(テレパシー、危機的状況に発動する念動力、竜を呼ぶ力など)によって、人は自らの愚かさや身勝手さを少しは知って、多少は反省すべきだし、クゥは竜に乗って異世界に旅立つべきだ。しかし、竜は幻覚に過ぎず、クウは犬に乗ってマスコミから逃げる。子供達は、純粋で素直な分だけ、暴力的で残酷で容赦しない。仕方なく飼うことになった犬や夏休みに捕まえたカブトムシと同じくらいの愛情を、クゥに注ぐ大人達、子供達。クゥへの愛情よりも、子供同士や親子の心の襞(ひだ)がきめ細かく描かれる。この乾いた生物観と人間観はクールですらある。どうしようもない現実から、決して飛翔せず、どこまでも地続きにファンタジーを生き延びさせようとして、果ては宅急便で僻地(沖縄の奥地)に運ばれるクゥ。このカタルシスの無い映画を仏頂面(ぶっちょうづら)で見ていたTは、唸(うな)りながら3点。それでもクゥは魅力的でカワイかったからとNは3点。合計6点。

Kuu2008

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2008年5月25日 (日)

映画「ナルニア国物語〜カスピアン王子の角笛」

「ライラの冒険」に味をしめて、今度は「ナルニア国物語〜カスピアン王子の角笛」を見た。原作を読んでいないので厳密には語れないが、演出、脚色、配役、造形、SFX、どれをとってもイマイチな印象だった。子供用戦争映画(そんなジャンルがあれば、だが・・・)を見ているようで、ファンタジーのエレガンスが無く、残忍で狡猾な人間ドラマばかり。石原家の「三大がっかり映画」のひとつに間違いなくランクインするだろう。Nは1.5点。Tも1.5点で、合計3点。

Narnia

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2008年5月15日 (木)

小説「ライラの冒険」

映画「ライラの冒険」を気に入った我々は、小説も読んでみることにした。
「ライラの冒険」とは、単なる映画用邦題に過ぎず、本当の小説は
「黄金の羅針盤(The Golden Compass/Northern Light)」「神秘の短剣(The Subtle Knife/His Dark Materials)」「琥珀の望遠鏡(The Amber Spyglass/His Dark Materials)」の三部作であり、映画になったのは第一部。最初は、この作品を「ハリーポッター」のような児童文学と捉えていたが、実は、これは本格的なファンタジーであり、「指輪物語」のようなスケールと「ダヴィンチコード」的?な宗教への挑戦を感じることができる。 "His Dark Materials"は、ミルトンの「失楽園」からの引用とのことで、物語中ではダストと呼ばれる、ある意志を持った、目に見えない粒子を表している。1500ページを超える大作であるが、残りのページが少なくなると、この冒険世界と別れるのが、寂しくて切なくなるほど、TもNもハマってしまった。子供から大人になるってことは連続的な出来事ではなくて、パラレルワールドの別の次元に迷い込んで、全く違う人生が始まるくらい劇的なことで、且つ、取り返しがつかないことだと知る。TもNも万感の思いを込めて10点満点。


Lyra

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2008年5月11日 (日)

映画「隠し砦の三悪人 The Last Princess」

樋口真嗣監督の最新作を六本木ヒルズにて。黒澤明のオリジナルを観ているTは、それがどう料理されているのか?を、Nは時代劇通として、その出来映えを、楽しんだ。役者が、特に雪姫役である「長澤まさみ」が魅力的に描かれていないことと、殺陣(たて)がイマイチなことと、時代劇の作法が出来ていないことなどで、Nは2.5点。Tはオリジナルに対して、新しく盛り込まれた部分(瘴気、スターウォーズの逆輸入、指輪的演出、若者の恋愛など)があまり面白くなかったので、やはり2.5点。合計5点。しかしTもNも宮川大輔の演技はよかったと評価。パンフレットにある樋口監督の絵コンテの迫力は、凄い。なぜこれが映画に出てこなかったのか残念。二日後、DVDレンタルで、オリジナル作品を見た。Nは「こんなに面白い映画がどうして、あんなに・・・」と2点に訂正。Tは、見れば見る程、細部の綿密さがわかってきて、やはりオリジナルは凄い作品だと再認識したが、2.5点で変更なし。合計は4.5点。

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